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■+Rのダブルレイヤー(二層化)製品発表
+R陣営はこの夏いよいよ、皆さんお待ちかねの片面二層化「DVDのダブルレイアー(DL:デュアルレイアーと呼ぶ場合もある)」を発表。ソニーが4/24に『DRU-700A』を発表(5/15発売予定)して先陣を切った。「+Rは普及するの?」と首をかしげる人も多く、現在のマーケットを見ると、海外では検討している+Rメディアだが、国内では圧倒的に-Rメディアが市場を席巻しているというのが実状だ。だからこそ、そんな実状を打破するためにも、DLや16倍速(16x)のいち早い開発と、市場への製品リリースは+R普及のための大きなチャンスとなる。ドライブの開発にも注目が集まるが、普及の鍵を握るのはメディアメーカーでは、というのが今回のコラムの内容だ。
DVDメディアに関して市場の興味は高いようで、第241回の「DVD激安メディアと国産メディアの違い
〜メディアメーカー太陽誘電に聞く〜」は大変に反響があった。そのときに「次回はDVD最新技術とメディアの話を」と予告しておきながら伸び伸びになってしまってゴメンなさい!!
DVDの話題を楽しみにしてくれている方、本当にごめんなさい。遅ればせながら、今回はそんなネタで。
さて、高速化に目を移すと現在の記録型DVD-R/+Rドライブ市場のトレンドはご存じのように「8倍速」が主流。そんな中で、CD-Rのときから高速化で一目を置かれているドライブメーカーのプレクスターが12倍速という意表を付くドライブ『PX-712』シリーズを発売することになって、多少市場がザワついた。12倍速ドライブについての私の見解は、発売中の月刊PC
Mode誌に掲載している僕のコラムをご覧頂きたい。
■高速化は16xで一旦打ち止め
これまで高速化を進めてきた記録型DVDだが、16xがひとつの節目となりそうだ。「高速化の壁はディスクの回転数。一般に、1万回転/分くらいがディスクが耐えられる限界といわれており、DVDの場合は1万回転での最外周での線速から16xくらいということになる」(リコー広報)。DVDの16xといえば、CDでいうところの144倍速となるので、如何に急激に高速化されているかが想像できるだろう。もちろん、この過激な速度アップは、8xメディアとは材質からして違うものを開発しなければならない、という技術的な難しさを要求するのだ。太陽誘電の藤井氏(前回のコラム参照)は語る。
16倍速はビジネスのタイミングを見ていつでも投入できる、という単純なモノではないのですね?
16倍速メディアの開発は大変ですよ(笑)。1万回転を超える高速なディスク回転数でも、伸縮が少なく、一発で書き込める、良いメディアの条件を満たすには、材質やラインを新規に開発する必要があります。(藤井氏)
高速化は一旦、16xで区切りだという意見が多いですね。
そうでしょうね。DVDドライブが20,000円程度で売られるのを前提にすると、それ以上の高速化を行う適切なモーター(駆動系)が見当たらないという感じでしょうね。また、今言ったようにメディアも開発はできるが、大量生産にはいくつかの課題があるため、それをクリアするために研究中です。
高速化には開発者たちの努力がある。先進技術開発に積極的で、独自のアゾ色素を採用して安定性で定評のある三菱化学メディアでも、今年3月に16倍速対応のアゾ色素を新開発したことを発表していて、16倍速を達成するにはこれまでと一線を画した技術が必要であることをアピールしている。
■二層化普及のカギを握るのはメディア
二層化によってDVD±Rの容量は約2倍の8.5GB近辺になる。前述の通り、水面下では+RWアライアンス陣営が積極的だ。更に、意外と台湾など海外のドライブメーカーが積極的に動いている、という噂もあり、やる気満々で期待できそうだ。一方、オープンな組織としてDVDフォーラムが規格策定を行うDVD-R陣営は動きが鈍そうだ。DVDフォーラムでは、新しい技術に関する審議はWG(ワーキンググループ:部会)内で行われるが、3月の時点でDVDの二層化について専用のWGは設置されておらず、審議もこれから。今後、審議に6ヶ月はかかるだろう、という見方もある。
二層メディアの開発について技術的にクリアはされていますか。
開発レベルではできています。ただし、一層と二層では生産ラインも違い、正直なところメディアの量産には多くの課題があります。現状(2004年2月下旬)では、大量生産には向かない状態なので、価格面でご期待に応えられるようにコストを下げる方法を模索しています。
価格設定が高価になるかもしれないということですか。
"2倍の容量なら価格は2倍以下で"という考えが市場原理としては自然ですが、そういう価格設定では現時点では生産コストが全く合わない、ということです。
ズバリ、2倍の価格では赤字ですか。
そうです。(損を承知で)戦略的な価格設定をしてでも市場をとる、ということなら話は別ですけれど。
ユーザにとっては期待が大きい二層化(DL)だが、冷静に考えると企業にとっての課題/難題も見えてくる。こういった課題を各メディアメーカーがどのように帳尻を合わせてくるか、興味深いところだ。もちろん「二層メディアが高くても売れる」という算段があれば話しは別なのだが、そうもいかない。ここからは僕の所感だが、仮にDVD-Rメディアが発売したてだった頃のように、DLメディアが1枚1000円を超えたとしたら今のユーザは魅力を感じるだろうか。また、二層メディアが何に使われるのか?
という想定に対して「ビジネスの絵が描けない」というのも大きな課題となっているようだ。市販のDVDビデオのコピーユーザーにとっては二層メディアはまさに垂涎のアイテムだが、市販されているDVDビデオの多くはコピー防止の暗号化がされており、それを解除することは違法だ。違法な市場をアテにしたビジネス戦略は、企業が立てられるはずもない。もちろんハリウッドだって良い顔をしない。その他の用途としてDVDオーサリングがあげられるが、当初の予想ほどこの市場は拡大していない。
■それでも大容量は必要だ
それでも僕たちには大容量メディアが必要なのだ。そう、DVDレコーダー市場に目を移せば、1枚のディスクにもっと高画質で長時間記録したいというユーザーはとても多い。私もそのひとりだ。現在は1枚のディスクに標準画質で2時間、最高画質(パナソニックでいうXPモード)では1時間しか録画できない。最高画質で2時間録画したい。最近はだらだらと長い映画ばかりなので、2時間でも足りない。そもそも最高画質ですら、僕は画質に満足してはいない。だから二層化がだんぜん必要だ。そうなるとDVDレコーダーの買い換えだ。わーい。またカミさんのイヤミが飛んでくる・・・閑話休題。
取材を通じて大きな壁を痛感しながらも、高速化や大容量二層化という次の進化へ早く漕ぎ出して欲しいと強く願うのである。そのときは目前だ。カギはメディアが握っている。
※各社のコメントは2004年2月下旬〜3月のものです。
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