通話や通信、放送といった分野は公共性が高いものであり、「ビジネス」という言葉で安易にくくれないことは解っている。しかし、収益性がなければ発展していかないことは簡単に想像できる。その意味では、期待のワンセグ放送に収益のしくみが見えにくいことが、現時点では気がかりだ。
さて、今回も前回に引き続き、NTTドコモの引間氏と白藤氏に聞いたワンセグの実際についてレポートしたいと思う。
■ワンセグ対応端末を探る
神崎「これまで放送についていろいろお伺いしましたが、ここからはケータイ電話機を中心にお聞きします。まずは、見た目から・・一般のケータイとひと目で違いを感じるのはアンテナですね」
ドコモ「アンテナは収納式ですが、通常、感度の良い場所では収容したままでも問題なく視聴できると思います。また、アンテナ兼用のイヤホンを端末に装着した場合は、収納式とイヤホンの、どちらか感度が良い方を使用して受信します」
神崎「僕のFOMAは音楽が聴けるんですが、やっぱり気になるのが消費電力です。電車の中で音楽を楽しんでいたら、肝心な時にケータイの電池切れ・・なんて困りますし(笑)。ワンセグの場合、満充電からでどれくらいの連続視聴時間を想定しているんですか?」
ドコモ「現時点では2.5時間くらいです。放送波の変調の仕方など、パラメータが放送局で一律に決まっていないため、現段階では、連続視聴時間がはっきりと言えないのが現状です。
神崎「変調方式によって、電力消費量が変わってくるんですか」
ドコモ「はい。1/2や2/3などQPSK(※)の方式が異なると復調する部分で電力の消費量は異なってきます」
※ デジタル信号をアナログ信号に変換する変調方式、Quadrature Phase Shift Keyingの略。
神崎「データの情報量がかわったりするんでしょうね。ワンセグは安定したきれいな画面が特徴だと思いますが、クルマや電車、地下鉄でも視聴できるんでしょうか」
ドコモ「クルマでは問題なく視聴できるようですが、弊社のフィールド試験はまだ実施していない段階なので詳しくは解りません。新幹線もまだ試していないと思います。ただ、地下鉄では利用できません。現段階で(地デジの)電波が入らないところではワンセグも受信できませんので」
神崎「地下鉄に乗車しているときに観たい、という要望は多いでしょうね。マナー面ではまた賛否両論でしょうけれど。ちなみにワンセグ対応の端末で、従来より悪くなる点はなんでしょうか」
ドコモ「ワンセグの受信チューナーを搭載することによって端末の価格が上がってしまいます」
神崎「一時期、0円でケータイを契約して、すぐに解約してデジカメ機能だけ使うというユーザーがいたと聞きました。今は、契約者でないと利用できないように制御するしくみがケータイのいろいろな機能に施されているようですが、ワンセグの場合・・」
ドコモ「その辺は戦略的なことなので、これから決めていくんだと思いますが、現段階ではワンセグのチューナーがそんなに安くない…つまり、ワンセグ対応端末の価格はそれなりの価格になると予想しています」
神崎「0円で配るような事態には、そもそもならないだろう、というわけですね。ところで端末の厚さや重さはどうですか?」
ドコモ「端末自体はご覧のように厚さが増していますが、思ったより重く感じないデザインを採用するなどの工夫をしています。PDC(ムーバ)などに比べれば大きいとは思いますが、機能アップを考えればそれほど大きくなっていないのではないかと弊社では思っています」
神崎「現段階で・・145g。僕の901iSと15g程度しか変わらないんですね(笑)」
■ワンセグ放送は録画できるの?
神崎「ワンセグの録画についてはどういう取り決めになっていますか。録画はできるんでしょうか」
ドコモ「録画はできます。ただ、録画したものを外部に出すかどうか、という議論があると思います。内蔵のメモリには番組を録画したり静止画をキャプチャをすることはできます。しかし、録画したもの、保存した画像をメモリからminiSDカードなどに書き出すかどうかは、技術的なところと著作権的なところの両面で考えていく必要があります」
神崎「まだ決定していないということですね」
ドコモ「技術的なところでは、SDカードに書き出すコピーコントロール規格が決まっていないので、現時点ではやってはいけない、ということになりますね。4月時点でもSDカードなどに保存した番組を書き出す機能が実現するのは時間的に難しいのではないでしょうか。放送規格でも検討が必要でしょうし。」
神崎「一画面を静止画キャプチャしてメールで送るという機能はありますか。」
ドコモ「ありません。端末の外部に送り出すことは現時点ではやってはいけないこと、ですね。」
神崎「ワンセグケータイを家庭用テレビにケーブルなどで繋いで、ワンセグ放送や録画したものを大画面で観られる、という機能はありますか?」
ドコモ「ありません。現時点ではそういう必要性はないのでは、と思っています。携帯端末の小さな画面用で、秒に15フレームの動画ですから、大画面で観るとやはり品質的には満足できないと思います。パナソニックさんがストラーダというカーナビでワンセグと12セグメントの両方が受信できる製品を開発しています。12セグはとても綺麗な画面です。しかし、ワンセグの画面は画質の悪いところが目立ちます。このカーナビの画面サイズでさえハイビジョンとワンセグ放送の画質の差は歴然としている、という印象ですね。」
ワンセグは12セグよりカバーエリアが広いと言われている。カーナビでは、画質が落ちてもいいから観たいというユーザ向けにワンセグを受信できる機能が利用されるとみられている。
神崎「今回は、どうもありがとうございました。勉強になりました」
(取材は2005年10月24日実施) |